Are You Happy? レビュー3:Groove Groove Groove 重ねて Music

10.また今日と同じ明日が来る

二宮和也ソロ。

エモな二宮和也をボカロのキャラクターのように扱いエレクトロで仕上げた曲。従来二宮ソロは「自作のエモーショナルな詞、メロディと声」が主体である。だが一貫してビート、リズムが主体となっているこのアルバムの中ではそのエモさをあえてキャラクターとして処理しているように見える。WONDER-LOVEがメロディ主体で仕上げられればTimeのRock Youのように、この曲もメロディ主体でいけば字余りエモーショナルギターポップになっただろう。だがそうならなかったのが本作がただの寄せ集めアルバムにならなかった凄いところで、個人的に「サンプリング素材としての二宮和也の発見」であるトラック09-10がAre You Happy?のハイライトだと思っている。「エモな二宮」を素材としてサンプリングしてビートに乗せているのだ。エモニノがエロクトロニカ上の声としてキャラクター化されることでいつもの「エモな二宮ソロ」節が苦手な人にも聞きやすく結果的に伝わる楽曲になっている。エモな二宮ソロが好きな人はどうキャラクタライズされようとエモニノ好きなのでこれも問題ないのである。二宮監修の前トラックWONDER-LOVEと音の傾向を合わせたそうだが、メロディや曲調で選んだのかこのビート、エレクトロ的処理を二宮がチョイスしたのかはわからない。ただ自身のラジオで嵐楽曲を連続的にかける「ニノフェス」などを聞く限り彼はソロとはまた違ったグルーヴィーなDJセンスを持っている。それが曲に反映されているのかも。ミニマルに始まり壮大なアンビエントに展開していくトラックが美しい。

11. Daylight

典型的な嵐の良曲ミディアムバラード。これどこに入れるか難しかったと思う。超変化球が続いた後の落ち着きといったところだがトラック10のピアノがこの曲のイントロへの上手い橋渡しになっている。ここで初めてメロディ主体の曲が来るんじゃないのかな、このアルバム。エンディングで鳴り響くトランペットの中野勇介氏はこのアルバムでほぼ半分、8曲に参加している。がっつり演奏陣が関わるウエイトが大きいのもこのアルバムの音に強さと一貫性がある一因だと思う。

12.愛を叫べ

この曲は不思議な曲で、シングルとして聞くとちょっと古臭いどうってことない(ごめんなさい)結婚式ソングなのだが宮城BLASTでは神々しい鎮魂の曲に(花に飾られた白いスーツの嵐たちはまるであの世とこの世を結ぶ冥婚の花婿のようだった)今作では多幸感溢れる懐かしいドゥーワップ部分が生きていて間奏のストリングスが華麗で曲全体を上品に仕上げている。様々な時代の楽曲を行き来するこのアルバムで歌謡曲最古が青春ブギなら洋楽最古がこの曲という感じ。

13. Baby Blue

松本潤ソロ。

ジョージハリスンみたいなのきた!美しい高野寛エレクトリックシタールから始まるメロウチューン。このシタールはイントロだけでなく間奏でもたっぷり聴かせてくれる。二宮と同様松本のソロと監修曲も同傾向で、こちらは時代的な対比を感じさせる(今作ではこうした同傾向の曲を違う時代的解釈で展開していると感じさせる曲の組み合わせが幾つかある)。監修曲のDriveが80年代シティポップスから90年代の渋谷系への流れを感じさせる作りなら、ソロは渋谷系からリバイバル気味な2010年代の星野源言う所のイエローミュージック。そこを錚々たる渋谷系ミュージシャンたちがバックアップする。ただの懐古趣味ではなく洋楽の日本人的解釈という命題は一過性のムーブメントでは終わらない、そしてアイドルもその一端を担っていると思わせてくれる曲。松本自身の今までのソロも洋楽への憧れと自分の資質との距離の取り方を常に測っているようなところがあったのが、この曲にはうまくはまっている。

14. Miles Away

大野智監修曲。

正直最初はまたピアノでメロディアスなの続くのー?と思ってしまったがそこは大野、バックビートを強く効かせてソウルフルに行くのね、と思っていたが聴くうちにああこれは嵐の各自の声を絵の具のようにして大野が描く絵なのだな、と感じるようになった。中盤からのここまでやるか!という嵐の声の重なりがすごい。うーんちょっとこれはすごい。曲調として何か目を引くわけではない(これはBad boyも同じだ)が、とにかく単純な構成の中に複雑に強く入り込んで突き抜けていく嵐の声とそれを形にしていく姿勢がすごい。そういう意味でも大野の絵のテイストと似ている。別に彼が音をいじってるわけじゃないだろうが(歌割は青春ブギ以外全て監修メンバーが行っている)大野智ちょっとスタジオこもってミックスやってみない?と思ってしまう。あとこんなの思うの自分だけかもしれないが大野の絵と同じでほんのり不気味なのがいい。この重なる声の凄みと不気味さをソロでも良いので追求してみてほしい。

15. To My Homies

櫻井翔監修曲。

韻シストの演奏に兄弟的な存在にに呼びかけるラップと、櫻井翔の引き出しから持ってきたねとニヤリとくる曲。最初のサビで愛を信じてる、ってうんそうだね、真っ正面な歌詞だね(ごめんなさい)と思ってたのが大野パートの次から仙人が雲の上から「こちらはゆったりしてるよhomie」と語りかけているような二宮パートに来て、「これは嵐が嵐でなくなった時、つまり未来ののただのおじさん人となった嵐(二宮パート)が今の嵐(大野パート)に語りかけているのでは?」と感じHomie(=Homeboy、故郷の友人)とは過去現在未来の嵐たちなんだわ!なんて泣けるのわーんわーん、と思ってたら、このパートはリオ行きの飛行機の上で書いたそうで、ゆったりしてるのはアイドルという業から解き放たれた仙人じゃなくてJALのファーストクラスかよ!とかなったがでもまあ前段の思い込み通りのまま解釈して聞いてます。そうすると最後の方で何度だって言うよ愛を信じてる、全てを受け入れてずっと信じてる、ずっと信じてる、のリフレインが胸に刺さってくる。わかったよ君らがそう言うなら光も暗闇も全てを受け入れるよ。ずっとずっと行くよ信じるよ。愛を信じるよ。とポエムだだ漏れになるのだった。

16. Don’t You Get It?

この曲とトラック02のUps and Downsのみがアルバムの5人曲として作られた曲でどちらもFunk。製作陣が本アルバムをどうイメージ付けたかったかが伝わってくる。こちらがリードトラックとして看板的な扱いだがMark RonsonプロデュースのBruno Mars「Uptown Funk」みたいじゃねーの?という声は承知の上、でしょうな。アップタウンファンクにしてもDJプロデューサーであるマークロンソンがブルーノというポップシンガーと共に「ファンクってこういう音楽でしょ」という大衆化を行った結果であって。ここでも「同ジャンルで時代的に対になる曲」を感じさせるのは、Ups and Downsが70-80年代のFunkにジャズフュージョンやディスコの要素を加えて大衆化させたEarth,Wind & Fire(宇宙のファンタジーやセプテンバーといったディスコ曲が有名ですがもっとファンク寄りのアース)っぽい音なのに比べてこちらはその後のプリンスやザップ&ロジャーといった80年代Funkスターを経て前述した通り2010年代のPopなFunkになっているところ。まあとにかく嵐にポップなディスコファンクは正義であるよ。そしてジャニーズのブラックミュージック輸入史的にもこれは王道なのか、な? ちょっとわからないな。

17. TWO TO TANGO

通常盤のみのボーナストラック。

うおおおおかっこいい!スパイ大作戦Mission Impossibleのテーマをアレンジして3-2クラーベに展開したようなイントロに妖しく乗っかる大野ソロ、でもこの曲のおっしゃれーなとこはそこからふわっと広がる「待ってるFantasy 宙に舞う スタッカートなBeat」以降の部分。無国籍的な美しいメロディ展開、こういうのは昨今のダンスミュージックにはないシティポップやエキゾチカミュージックを経由したそれこそはっぴいえんど由来のJ-pop的良さだと思うんですがどうでしょう?

で、これはタンゴなのか? リズムは3-2のソン・クラーベで4ビートスタッカートのタンゴとはちょっと違う。Bolero!がボレロを謳っていながら実情は同じラテンでもカリブのソカやメキシコノルテーニョぽかったように、外国人がソーラン節と言いながら安里屋ユンタ歌ってるようなラテンっぽいエキゾチカと捉えてよさそう。It takes two to tangoは英語のことわざでタンゴは二人じゃないと踊れない、責任は互いにあり、喧嘩両成敗といった意味で、全編に流れるスパイ映画テイストが二人のタンゴをどっちもどっちの共犯者、おあいこといった一蓮托生の駆け引きに感じさせる。

モチーフになってると思われるスパイ大作戦のテーマの作曲者はアルゼンチン生まれのピアニスト、ラロ・シフリン。「ファンタスティックなギターはDjango」でフラメンコちっくなギターが流れるがこれはベルギー生まれのロマ(ジプシー)ジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを指しているのだろう。と、なんとなくタンゴなギミックがちりばめてある。あとこの曲サクラップもかっこいいんですよね。ボートラなのがもったいないけどこのアルバムだと隠し球になるしかない曲でもある。この手の嵐のエレクトロスイング曲の中で一番完成度が高いと思う。ということで次のテーマはジャジー?と振ってみる。

 

(おわりです)

Are You Happy? レビュー2:Groove Groove Groove 重ねて Music

06. 復活LOVE

曲レビューはこちら

keibeee.hatenablog.com

 

実はこの曲のシングル通常盤がこのアルバムの音の基準値になっているのではないかなーと妄想している。全体を覆うアーバンポップ感、その源流であるファンク等ブラックミュージック、師であり同志だった大瀧詠一的な歌謡曲に対する眼差し、こういった山下達郎氏的なJPOPの良き部分がAre you happy? には生かされているのではないか。

復活LOVE通常版には表題曲のほか愛のCollection、Bang Bang、Are you ready now? という3曲が収録されている。 達郎曲を軸にしてこのカップリング三曲は達郎的Jpopへのリスペクトと別の方向からのモータウンやファンク楽曲へのアプローチ、そして今聴くと今作Are You Happy? のへの前触れといった味わいが感じられるのだ。

 復活Loveを山下達郎解釈によるhiphop以前のオールドスタイルモータウン的楽曲と位置付けると愛のCollectionはマーヴィン・ゲイ以降の新しいモータウンサウンドのHiphop-エレクトロ解釈に感じる。

 愛のCollectionは二つのモータウン・ビートをベースに?(この辺りから復活LOVE通常盤レビューを書きたかったのだが私の知識と音感不足で断念しました…)リズムをトリッキーに配してその上に浮遊感のある洒落た音を重ね、セクシャルで観念的な歌詞、Amaging…Amaging Love! と繰り返すゴスペル的なコーラスなどで複雑に構成されている。これらはマーヴィン・ゲイが始めた「正しいモータウン=綺麗なスーツを着て無名のバックバンドを従えて主に観客が白人のショーでお話的な恋や日常生活の歌を歌うハレの楽曲」から脱してバックミュージシャン達と様々なジャンルの音を取り入れた楽曲を練り、スタジオに篭ってミックスを重ね私小説的な曲を、性愛や社会問題を歌ういわゆるニュー・ソウルをエレクトロに発展させたものではないだろうか。(と私は思った)

 Bang! Bang! はジャズにエキゾチシズムを加味したエレクトロスゥイング風味という点で今作通常盤ボーナストラック(だが白眉!)のTWO TO TANGO に通じるものがある。

Are you ready now? はシティポップ・ファンク、演奏部分のファンキーさとヴォーカルの爽やかな青さポップさがすこしミスマッチな気がして残念だったが今回のアルバムではファンク曲とシティポップ曲を分離させて両方をきっちりやり遂げてくれた感じだ。

復活LOVE通常盤プチレビューのようになってしまったが、これらカップリングの実験曲が今回Are You Happy? に繋がっているように感じるのと、アルバムを作る際復活LOVEと音のレベル、テンションを合わせるべくクオリティ向上させなければいけなかったであろうと考えるとやはりこの曲が嵐にもたらしたものは大きいと思う。

07. Amore

 相葉雅紀ソロ。

この曲めっちゃバックの音がゴージャス。大編成ホーンに全編に踊るピアノ、飛ばすギター、でイントロでおっ、と思わせて間奏で炸裂するハモンドオルガンにミニモーグですよ! セイシューンブギ(ハイティーンブギのもじり?)が近藤真彦ならこちらは田原俊彦の抱きしめてトゥナイトやごめんね涙(トシちゃんのダンス結構すごいです)のオマージュか?と思いきやいやいやサザンオールスターズじゃないの?って、超ラテン歌謡ポップスハイブリッドじゃないですか? あと最初オールディーズ風に始まってからのアップテンポラテンでなーなななーな、はアイリッシュっぽいギターからアップテンポのギターポップでなななーなななななとなったドリアラのソロ曲Hello Goodbyeを思い出させる構成。相葉氏に関してはそろそろネタ曲じゃないのお願い、というファンの気持ちはわかるのだがこれだけゴージャスなアイドル歌謡背負って立てるの、すごいと思う。照れずにかっこいいパフォーマンスしてくれるといいんですが。(Mr.Funkも高級スーツの上に毛皮のコート着てじゃらじゃらアクセサリーでやって欲しかった…)ちなみにこの曲のインスパイア元のひとつと言われる勝手にシンドバッドの元ネタと言われているスティービー・ワンダーのAnother Starと聞き比べても面白い。

08. Bad boy 

大野智ソロ曲。

バチバチバウンスEDMかよ! 「やったことない感じ」で選んだそうだが君はやったことなくても今最も巷の数多ある有名無名人がやってるタイプの曲をなぜやる大野智よ。と思ったが有象無象がやり尽くしたジャンルを我が最後の流通経路に落とし込んで王道にしたてあげてこそアイドル、エフェクトに負けずに君臨する我の高音、全ては計算通りさ。なのか?

いやかっこいいよ。うんかっこいいよ。ふぅれぇーいゔぁあーとか、ぷぅれぇーいやぁーとか、もっとイヤらしく強調しても良かったよ…我こそDelight…我って一人称の歌詞、今まで嵐にあったか?我だよ…。えぶりばでーぷちょはんずあぷいんじえあ!と煽る彼を前に我々はどう反応すればいいのかだつた…。ダンス…注目デスネ。この曲はしつこいくらい繰り返すトランスが味だからフルでやらんと映えない気がするが保たせてくれー。なぜか相葉大野両氏に関してはパフォーマンス込みで聞いてしまいますね、どうしても。震えて待て。

09. Wonder-Love

二宮和也監修曲。

自分的今作ナンバーワンおしゃれ曲。重低音ベースかっこいいーと思ったら Erik Lidbom&Jon Hallgrenと、Boom Boomコンビの作曲、納得。いろんなコーラスやオカズの音が効いてるんだけど構成がシンプルなのと技巧こらさないドヤおしゃれやろ感のない嵐の歌い方の塩梅がすごく良くて、やりすぎおしゃれ寸前のところで止まってるのがいい!おしゃれスペイシーエレクトロに真っ直ぐなユニゾンって、こんなに気持ちいいとは。

どストライクだとやっぱりあまり語る事がない(笑)。

 

(3に続くですよ。。。)

Are You Happy? レビュー 1:Groove Groove Groove 重ねて Music

Are You Happy? は嵐が受け継いできたもう一つのジャニーズの財産、フォーリーブスからSMAPのブラックコンテンポラリー、アーバンソウル、ラテン・ブラスロックといった洋楽部分、特に嵐が得意とするDISCO-FUNKが全面的に打ち出されている。

また、たのきんトリオ、そしてジャニーズのみならずエレキ・ラテン歌謡といったかつては王道であったが現在のJ−POPでは懐メロやパロディでしか扱われないジャンルもアイドル歌謡として見事に昇華させた。

前作Japonismがとんちき日本を軸にしたジャニーズイズムへの原点回帰であるならこちらはそこから外れた、だがしかし嵐にとってコアな部分の原点を探ったアルバムである。

今回のアルバムではメンバーの選択によるソロの他に嵐にスーパーバイズドした曲(以下、監修曲と呼ぶ)があり、自分で歌う曲・嵐に歌って欲しい曲と、それぞれが2曲ずつ担当している。よって16曲(通常盤はボーナストラック含め17曲)中、タイアップ4曲を除き10曲に嵐メンバーが主体的に関わっているという非常にメンバーの好みを反映した作りになっている。

前二作DIGITALIAN、Japonismがコンセプチュアルに傾いた作品だったため今回は基本的に気持ち良いと感じる音を集めたそう。本来嵐のアルバムは強いテーマを設けていないのでこれは通常の状態に戻ったわけだ。だが今までは若い嵐メンバーを素材としてどう活かすか、外部の目でやっていたことを今回は大人になった嵐メンバーが嵐を監修するという一歩進んだ形態をとっている。

山下達郎竹内まりや夫妻による「復活LOVE」をはじめ完成されたシングルタイアップ曲、リードトラックと裏リードトラックとも言える2曲はグルーヴィーなファンク、その間に嵐メンバーのソロと監修曲がちりばめられさらに強力なサウンドと嵐の音楽志向を示したアルバムになった。

「復活LOVE」を聞いて嵐やるじゃんと思った方「愛を叫べ」を聞いて嵐懐かしい楽しいと思った方「Don't You Get It?」を聞いて「嵐がブルーノ・マーズみたいなファンクやってるぅー」と思った方、アルバムAre You Happy? を聞いて見て欲しい。

そしHow's it going?原理主義者の元or現嵐ファン(私もです)にとって、Are You Happy? はこれこそ嵐だよ!の出し惜しみなき総決算である。つまり現状最高作である。

 

さてここまで、外向きにべた褒め。

実際今までの嵐の作品で一番好きかもしれないというくらい気に入ってるアルバムだが、何がいいのかと聞かれるとどの曲が、あのフレーズが、と浮かんでこない。多分そこに通底している「音」が好みなのだ。逆に一曲一曲はよくてもアルバムとして苦手、という事もあり、そういう時はアルバム全体の音の傾向が苦手だったりバラバラに感じられる時だ。Are You Happy? は私にはとても計算された統一感のある音で作られたアルバムに感じる。このアルバムをどこかに持って行ってそのまま一枚かけっぱなしで場が持つ、というタイプの一枚。

何がいいのか。うまく説明できないので箇条書きにしてみた。全て主観なので最後に(だと私は思う)を加えて読んでください。

・ヴォーカルとそのディレクション、エディットの基本値が飛躍的に上がった。前作Japonismのイン・ザ・ルームについて発売時点のレビュー(こちら)

keibeee.hatenablog.com

で嵐のヴォーカルエディットが完成形に近づいた曲、と評したが本作ではそこを楽々超えた基本ラインが打ち出された。各メンバーの歌唱力、表現力の向上とその配置、アレンジに嵐の「声」で勝負する姿勢が強く伺える。

・漠然とした表現で申し訳ないが、音に対する演者、作り手の意思が一貫している。あるいは(DJ的な意味で)一貫させるようにしているように聞こえる。Twitterでフォローしている方が本作を「同じ音を共有して、目配せしながら遊ぶジャムセッションのよう」と評されていたがまさにぴったりの例えだと思った。このアルバムはそれぞれの自由意志に基づいた攻めの姿勢と楽曲の基本に戻るアプローチ両方が感じられるが、それも構成力とある程度の意思統一がある上でのことに感じる。音の基盤に意思があるので歌謡曲になろうがファンクになろうがひとつのグループ嵐の音としてバラバラに聞こえない。アイドルだからこそこんなめちゃくちゃなジャンルの曲を歌えることの強みを一貫性のある音が引き出している。

・曲の構成が比較的シンプル。嵐にありがちなイントロ、Aメロ、Bメロ、各自のソロ回し、Cメロ、大サビ、…ともりもりゴシック曲がない。構成が比較的単純な代わりに各パートでの音(声も含む)のヴァリエーションが非常に豊か。ゴシック曲が悪いわけではないが本作を貫く「グルーヴ感」にはこの単純さとその中にある豊かさが鍵になってるように思う。

・心地よい「繰り返し」がある。一点に向かって集約的に盛り上げていくのではなく短い印象的なフレーズを小気味よく繰り返すトランス的なノリが随所にある。また印象的な音がそのままで終わらずどこかでもう一度きちんと「聞かせて」くれる。

・とにかくグルーヴィー。上に挙げた点を簡単に言えばこれに尽きる。グルーヴを途切れさせる、ガクッとする要素をなるべく排している。ファンキーに始まったのにサビがアイドルポップになって失速したり、アイドルだからバラードで愛の歌を入れなきゃとか、かわいい歌も入れなきゃとか、サビは感動させなきゃとか、盛り上がりの泣かせのメロディが何小節も続いて冗長になるような部分がない。逆に言えば、アイドルらしいキャッチーさやキラキラした若々しさや感動を求める人には少々平板で物足りないのかもしれない。

 分析というほどのものでもない、こいつはこういうアルバムが好みなんだな、と思って読んでいただければ。(自分でも書いてて初めてわかったし)

あととにかく演奏と音質がいい。ここまでのヴォーカル基準値、音、グルーヴのサウンドプロダクトで仕上げてしまった以上、次からはさらなる上を目指すしかないだろう。

今作にたりないと感じる点を言えば、歌詞の面で耳と心に刺さる強いフレーズや情景を感じさせる描写が少ないように思う。音を優先したためにあえて耳慣れたフレーズを散りばめたり言葉の意味を読み取らせない選択だったのかもしれない。だがここになにかもうひとつ「うたごころ」を乗せた最強の楽曲を聴いてみたい。さらに未知なる分野への飛躍への予感が見える、やっぱりすごいアルバムだ。

 

01. Drive

松本潤監修曲。

車に乗り込みレディオ・オン。120bpmでゆっくりと滑り出す。歩く人達の顔が見える同じ速度。実にスタンダードでPOPなアーバン・シティ・ソウル。だがスタンダードをしっかりやれるって事が大事なんで、そこは嵐たち丁寧にソロをつなぎ歌っている。

間奏で入るストリングスが美しく、伴奏というよりカーラジオから流れてきた映画音楽で異次元に誘われるような構造に仕立てている事でこの曲がオールドなアーバン・ソウルから楽曲的にひねった「渋谷系」に、時代的に加速していくのを再現するようで面白い。

02. I seek

ここから本格的に加速。おしゃれだなーゴージャスだなーいい歌謡曲だなー。あれベースがシングルと違う?が第一印象。音源は変わらない?がベースとパーカッションの音がタイトに高音がカーン!と抜けるような音に変換してあるように感じる。clap音もクリアになっている?この事で曲に更なるうねりとハネが生まれて次のファンクへ繋ぐグルーヴが生まれていると思うのだが、どうか。

03. Ups and Downs

ぐるぐるサラウンドするハアハアも暑苦しいど正調ブラスファンク。こっちをリード曲にして欲しかったってくらいどストライク。でも分かりやすさとかあるんだろうね。リード曲でないからこそ、の泥臭い音なのかも。ストライクすぎるとあまり語る事ってないもんですね(笑)

途中で唐突にマイナーな泣きの大野ソロが入るが(大サビ?)上手いアイドル的アクセントとしてやり過ごしすぐに元のノリに切り替え、グルーヴを途切れさせない。本作はそこが徹底している。

04. 青春ブギ 

相葉雅紀監修曲。

近藤真彦ハイティーン・ブギ」のイントロを電子化したようなパーカッション音で始まる問題作。

出だしは80年代ヤンキー御用達のヴィーナス「キッスは目にして」(←ネタ元はザ・ピーナッツの情熱の花で、ユニゾン歌唱もあってイメージは時代的にこちらにより近い、全体的にフォーリーブスを思わせる)から近藤真彦調のちょいワルマイナーアイドル歌謡を思わせる曲調へ。日本の歌謡曲において「ブギ」が不良の代名詞となったのはいつからだろう、ダウンタウン・ブギウギ・バンドあたりだとはわかるのだが…。サビは美空ひばり真っ赤な太陽かアストロノウツの太陽の彼方にか。ひと時代回ってギザギザハートか。

しかし歌詞は不良ではなくストーカーおじさんが昔の少女漫画を実践しているような不気味さ(振り向いてくれるまであなたの心を不屈の魂でノックノックノックしちゃうのである)で、ユニゾンで力強く歌われ背後に轟くどーん、どーん、どんどんどんという大太鼓に狂気を感じる。

途中から太鼓が導くセイヤセイヤとよさこいが挿入され、聴く者に「ああ、一世風・・・・ね」という安心感をもたらすフックとなっているが、私としてはここはいらんので最後まで謎の狂ったレトロミクスチャーGSエレキ歌謡としてどーんどーんと大太鼓を背にアタック!アタック!アタック!と不穏たっぷりに駆け抜けてほしかった。

あとこの曲、歌下手がやったら悲惨だからね!嵐が歌上手いからできるんだからね!

05.Sunshine

櫻井翔ソロ曲。

光が溢れていくような開放感を持ったこのタイプの櫻井ソロ、真正面から明るく正しい事を歌える力強さはこの人の武器だと思う。正しい歌、そして端正な生音(ベースが井上陽水のバックで有名なベテラン美久月千晴氏など超安定メンバー)。端正なストリングス、端正なホーンセクション。優等生っぽくなりがちなこの曲だが前半RAP部分の小気味いいリズム、控えめだけど効いてるスラップベースやギターのカッティング(このカッティングが次の復活LOVEにつながっていく感じ)そして後半間奏では突然なぜかのEDMチューンに!円熟味のある演奏とEDMのコントラストが面白い。でもホーンは明るく降り注ぐ太陽光のようなまま、そして繰り返されるGood day it’s up to youの生トランスっぽい高揚感と、明るいノリを維持しながら変化に富んでいる大人無邪気な曲。

(2に続きます。。)

復活LOVE 初回盤レビュー : Hiphop以前の歌世界へ遡る、折り返し地点の傑作

まず最初に言います。傑作です。嵐の音楽史において大きな意味を持つ曲だと言えます。

嵐のLOVEをイメージして山下達郎竹内まりや夫妻が書き下ろした。NTTドコモdヒッツタイアップ曲。

作詞・竹内まりや 作曲編曲・山下達郎 コーラス&プログラム・山下達郎 ストリングスアレンジ・牧戸太郎 ストリングス演奏・今野均ストリングス ガットギター・佐橋佳幸。初回盤にはミュージックビデオ、メイキングDVDが付属。

ここでは曲(嵐の既存曲との共通性や山下達郎氏が大きく影響を受けたブラックミュージック、主にモータウンサウンドについて)、ダンス(主に歌番組で披露されたヴァージョン)、メイキングでのメンバーによる製作話から復活LOVEに触れていきたい。

曲提供の経緯等、大まかなことは復活LOVE - Wikipediaを参照いただきたい。ただしここで山下氏の発言として「こういうライブだったら俺にもイメージあるな」とあるが、これは「こういうLOVEだったら俺にもイメージあるな」ではないかと個人的に思い、その解釈で進める。いずれにしても山下夫妻が見た嵐2013年のライブは「 LOVE」と題されたアルバムのツアーであり、もちろんテーマは愛であった。嵐のファンには言わずとも通じるが、このことを頭の片隅に置いていただければさらにこの曲への興が増すのでは。嵐ファンなら、山下夫妻がLOVEのどの曲のパフォーマンスにインスパイヤされ復活LOVEをイメージしたのか考えるのも面白いだろう。

まず曲、印象的なギターのカッティングから(以降様々なシーンでこのカッティングが顔を出す)、続く美しいストリングスと達郎氏のコーラスで始まる。 第一印象がこれ。

とにかく音が素晴らしい。山下氏曰く、編曲は「オールドスタイル」だそうだが、最近の嵐の曲に顕著な圧倒的な情報量と音圧で全ての音が溶け合っていく(これはこれで悪くない)傾向とは逆に、一つ一つの音がクリアに意味を持って聞こえてくる。ソロのヴォーカル処理においても「ダブルヴォーカル(ダブルトラック→一人の声を多重に重ねる の意味と思われる)はしない方針」という事で徹底している。

 次に思ったのが「モータウン風ムード歌謡」。モータウン風というのは、乱暴に言ってヴォーカルがシンコペーションしててギターが右左チャンネルの下の方でちょんわかちょんわかと鳴ってて、上からストリングスが降ってくる感じ。典型的なのはこういう。

 Love縛りでwシュープリームスの「ラブ・チャイルド」

歌詞も「君が去ってしまった、僕には後悔だけ、寂しいよ戻ってきていくらでも謝るよ僕にはエインジェル君だけなんだ」というシンプルなマーヴィン・ゲイ以前のモータウン失恋ソング。

嵐の初期曲「とまどいながら」(2003 How's it going? 収録)「君はいないから」(2002 HERE WE GO!)を思わせる、ストレートな大野智のソウルに傾きながらも温度の低い透明感ある歌唱、それに続く各メンバーのシリアスなソロ回し(「もう一つのジャニーズイズムと淫ら歌謡の完成形」でも触れたが、それぞれの進歩は著しく、若い頃表現できなかった世界を見事に歌い上げるまでに上達している)が、前述したデビュー数年後の背伸びした歌唱とは一味違った円熟味を感じさせ、倦怠期カップルに起こった別れと再会、という曲にリアリティを与えている。

歌唱における客観性、対象への距離感は嵐というグループの持つ大きな特性であり、この曲を泣きの歌謡曲に、あるいはそのメタなパロディとなることから避けている。それでいながら山下氏発案による「I miss you…」「おかえり」といった「決め台詞」の挿入によって観客をキャーッと言わせるアイドル歌謡になっているのが見事。ドラマティックな間奏のストリングスの盛り上げ、その後に聴こえてくるガットギターの控えめな旋律も印象的。

 歌詞について。竹内まりやによる歌詞、その世界観、についてはこちら愛の為にふたりで何をしたというの −−スプリンクラーから「復活LOVE」へ)も併せて読んでいただけると。この他、メンバー自身の感想として「歌詞に繰り返しがない」。リフレインがなく「手紙のよう」で新鮮だったと述べている。この歌詞は一つの物語になっていて時系列順に聴いていかないと意味をなさないものになっている。また終始一貫して男の独り言で、視点が変化することはない。

歌詞と同様、PVの作りもワンカットの長回しで人物とカメラが複雑に移動することでソロヴォーカルを繋ぎ、場面が途切れることなく移り変わる。

 ダンス。モータウン風の仕草(チョリー・アトキンス←この人は歌手にダンスを踊らせるという事を初めてやった振付師〜によるテンプテーションズ等のダンス風)を取り入れながら、ジャジーなミュージカルやドラマのようにストーリーに沿って進行する。アイキャッチとなるような繰り返しやルーティーンのない構成。

歌詞、PV、ダンス全てにおいて「キャッチーとなる要素をあえて置かない」「繰り返さない」「戻らない」「時系列に沿って進む物語」を作り上げている。(その中で唯一繰り返されるギターのリフが様々な想像を呼び起こす)

これは、嵐のデビュー時からの特性であった「いろんなものを集めてぶち込んで全部等価に切り刻むカットアップ、サンプリング根性、Hiphop性」とは逆の方向性である。逆というより、それ以前に遡ったと言ったほうがいいか。

この曲から嵐のセカンドアルバム「HERE WE GO!」(2002)や3rdアルバム「How’s it going?」(2003)と同じ雰囲気を感じ取る嵐ファンが多いが、原因の一つはその源流が6−70年代のブラックミュージック、特に大衆に訴えかけるPopなモータウンフィラデルフィア・ソウルなどの楽曲群にあるからだと思われる。

ただし大きな違いは嵐のアルバムはHiphopを経由したサブカル-匿名的な楽曲であり、山下達郎の曲は山下達郎の作家的解釈で独自に発展した日本のpopで、この復活LOVEもまぎれもなく後者のストレートな山下J−popだという事。

実は私は山下達郎氏のはじめの認識は「正月になると大瀧詠一と喋ってる人、音頭とか昭和コミック歌謡を時々かける人、ドゥーワップ・アカペラの人」なのでお洒落、都会的一辺倒ではなく土着的なイメージも持っている。土着といっても都会の土着ですね。都会にいるからこそ知ることのできる異国の泥臭い音楽、知らない土地で流行ったポップミュージックに夢中になり育った人。なので、この曲はモータウン風昭和ムード歌謡に聞こえる。

でわたくし、もう何年も前から嵐は昭和歌謡が絶対似合う!と主張してきたので、山下達郎さんが嵐にモータウン風ムード歌謡をアテ書きしてきたのがすごく嬉しいのだ。

だって、嵐がずっとやってきた

  •  「ブラックミュージックのアイドル的解釈」という歴史、 
  • 今の30代の彼らが持っている「声の特性による昭和歌謡的ストーリー」構築、
  • 彼らが持ち続けてきた空気感「ちょっとさえない僕たちの日常」のシーン。

これらの要素を尊重し、見事に生かして、山下達郎的解釈ですんばらしい音で仕上げてくれたのだから。

嵐が挑戦してきた音楽歴をきちんと踏まえて、J-popとして作り上げ、40歳50歳になっても歌える嵐のアイドルソングとして復活LOVEを作り上げてくれた山下夫妻。

 嵐にとってのPopとは何かという問いに一つの素晴らしい道を示してくれたことに感謝したい。

 

追記

山下氏がジャニーズアイドルに楽曲を提供する際の方法論について興味のある方はKinKi Kids 硝子の少年のwikiも参考にしていただきたい。wikiでは筒美京平にしか触れていないがインタビュー等で山下氏はジャニーズ楽曲モデルとして馬飼野康二も挙げている。言わずと知れた現役のザ・ジャニーズメロディメーカーであり、今に至るまでジャニーズの様々な曲、特にバレーボールユニットのデビュー曲を手がけ、嵐のデビュー曲から初期のシングル曲も馬飼野氏作曲である。また、嵐メンバーにおいても自分達の原点、ジャニーズ的なるもの=馬飼野楽曲と捉えているフシがある。筒美京平は1990年代以降、近藤真彦を除くジャニーズへの楽曲提供が減っていくのだが馬飼野康二Sexy Zoneのような若いグループにも多数曲を提供している。

他に単なるおもしろ話として。復活LOVEのサビに下降音階が多用されるが、山下達郎が初のジャニーズ曲であるハイティーン・ブギ近藤真彦に提供する際、近藤の歌の特性を調べ倒し「上昇音階では音を外すが、下降音階では外す事が少ない」と突き止め、そのように作曲したエピソードがある。

愛の為にふたりで何をしたというの −−スプリンクラーから「復活LOVE」へ

2016年2月24日の48枚目のシングル「復活LOVE」が発売された。

作詞・竹内まりや、作曲・編曲・演奏(弦とガットギター以外)・プログラム山下達郎という濃いー布陣である。大野智言う所の「もう豪華すぎます」ってやつである。

山下達郎さんに嵐の曲を書いてもらいたいなあーと思った事がある。2012年の事。

私は元来嵐の曲は匿名的職人チームの作がいい派である。職人達が様々なメロディーやフレーズを持ち寄って、それらを繋ぎ合わせ切り取り、二曲三曲分のものを一曲に仕上げるキメラのような趣が嵐の曲の醍醐味だと思っている。大家、巨匠に作ってもらった曲はつぎはぎしておまけにラップを乗せたりなんかできない。

2012年に話を戻す。2012年10月31日に嵐11枚目のアルバムpopcornが発売された。表向きテーマはpopとは何か、である。私はこのアルバムのどこがpopなのか、彼らが考えるpopとはなにかが全く見えてこなかった。

おりしも震災後、無邪気に喜んでいた「国民的アイドル」の肩書きの重さがじわじわと身に堪え始めた頃。

popcornリリースが発表されたアラフェス2012も楽しかった。だがこれが彼らの考える「ファンが求めてる嵐コンサートの形」であれば行く先は見えた気がした(後日これは誤解であったことがわかる。当時アラフェスとは古いファンと嵐が『本当にやりたい事』を実現する為のコンサートだと思っていたが、どちらかというとアラフェスは各方面へのサービスの為のコンサート、であり、その後ツアーコンサートで嵐は古いファンも新しいファンも関係なくやりたい道へ突き進んで行った。popcornはアルバムとしては今も面白いと感じないがコンサートは最高に面白かった。以前とは全く違っていた。この2012年からのコンサートの変化がなければ私は嵐ファンを続けていなかったと思う)。そこに来て全く理解できないアルバムを聴いて私の嵐おたくモチベーションはものすごく下がっていた。

その時、popcornと一緒に店頭に大々的に並んでいたのが「山下達郎ベストOPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜」。

ああ、嵐もpopがどうとかこうとかブチあげてないで、黙って達郎さんに曲作ってもらいなよ…。

 と国民的popシンガーである事が命題であり続ける職人・山下達郎氏のベストを手に取り聴き始める。知ってる曲もあれば知らない曲もある。頭がアイドルおたく脳になってるので「どんな曲を嵐にやってほしいか、嵐が歌うpopてどんなものか」という方向性で聞く。脳を侵されているとはかくのごとく恐ろしい。

その時琴線に触れた曲が「スプリンクラー」だった。

所謂タツロー節ではないが大正琴なども使った印象的な冷たい音で、表参道駅の階段に雨が流れ込んでいく様子と心の中にどす暗い水が淀んでいく様が絵画的に歌われていた。そして雷の音まで入ってるのだ、嵐にぴったりじゃーん。愛への不信に満ちた男性視点の歌詞。表題の「愛の為に二人で何をしたというの」はこのスプリンクラーの一節である。それに続くフレーズが「僕は君の、おもちゃじゃない」

いやすごい歌詞なので検索して見てください。wikiも面白いです。

歌詞がとってもきつい男のものなので(矢野顕子氏が評するような弱気な男には当時の私には感じられなかった)嵐の曲じゃだめだね、大野ソロでまるではなから愛なんて他人事のように「僕は君の、おもちゃじゃない」となーんも心込めずに歌うと面白いよ。と偉そうに「この曲は嵐にやってほしい曲」と決めていたのだった。何様だって話ですねすみません。

 というわけでえーと、今年出た山下夫妻に作ってもらったシングル曲「復活LOVE」がわーいスプリンクラーみたいな世界観の曲だったよー、しかもアイドル嵐用に主人公は謝る男になっている!と、自己満な話がしたかった。

雨の中で去っていく彼女。だが山下達郎の男は許しを請うことはない。悪いのはお前だー。竹内まりやがそこを嵐に合わせて「ダメな僕を許して」の世界へと書き換えていく。いやあーたまりません。この表裏一体みたいな世界。ぜひ二曲の歌詞を並べてみていただきたい。

これが松本隆作詞によるKinKi Kidsの山下曲であったら、主人公は少年の高潔さを持って去った彼女を許すことはないだろう。たとえ自分が敗者となっても。エターナル。

しかし復活LOVEのしょぼくれアラサー(下手するとあらF略)男、ひたすら平身低頭エインジェル様の許しを請うばかりである。KinKiの山下曲は少年の純粋さのイデアとしてジャニーズJr.達のスタンダードとなり歌い継がれているがこの復活LOVEはどうだろうか。10代のジュニアの少年には歌えない世界ではないか。エロでもなんでも子供には無邪気に歌わせるジャニーズ。だがこの「中年男の情けなさ」をヒット曲にできるデビュー組ジャニーズがいただろうか。それが嵐だと、誰が今まで想像しただろうか。

嵐にはピカンチという年齢とともに展開するサブストーリー映画がある。その中で彼らは子持ちであったり別居中であったり会社潰したりとなかなか痛々しい中年になっている。復活LOVEはどちらかといえばそっち寄りの世界観だ。簡単に泣く男、簡単に帰ってくる女。きっとまた別れちゃうよと密やかに言われているこのカジュアルさ。まあでも人生そんな部分もあるさ。

「復活LOVE」提供の馴れ初めは、山下夫妻が2013年のLoveコンサートを鑑賞されたことから始まる。ちなみに乱暴に言ってLoveコンサートはバーレスクと人類愛をくっつけたようなコンサートである。そのコンサート後、山下氏が「嵐のLOVEなら俺にもイメージがあるな」等一言から始まった、要するにアテ書きである。しかも三年越し。

そして出てきたのは雨の中、逃げられちゃった逃げられちゃった逃げられちゃったよーな男。雨と涙は澄んだまま人生の曲がりくねった川へ流れるのか、あるいは都会の暗渠へと姿を隠し黒く地下で流れ続けるのか。

 山下達郎作曲・竹内まりや作詞ということで有り難くも山下氏のラジオ、コンサートで曲をかけエピソードを話していただき、山下夫妻のファンからの反響もツイッターで見かけられるようになった。まあ大体がたつろーさんにうたってほしいってものでしたけど!

山下達郎さんファンには通常盤をこそ聞いていただきたい(こんなブログ見てないだろうけど)通常盤こそプロジェクト嵐の山下達郎リスペクトに溢れているからだ。ということで、つづく。

 

 

Japonismコンサート感想:藤島グループによる喜多川ジャニーズイズムの展開と継承(後編)

 
 
15.日本よいとこ摩訶不思議 
少年隊カバー曲。
前半の始まりがmiyabi-nightによる四季絵巻なら、後半の始まりは日本よいとこでザ・ジャニーズ絵巻。
曲自体がとんちき日本*1でありアクロバットあり、口上風ラップありのジャニーズ・ジャポニズム。バックのジュニア達が歴代の先輩に扮して登場し盛り上げる。少年隊、忍者、光GENJI、楽器を持った 男闘呼組あるいはTOKIO、黒い衣装の近藤真彦?など、中に裸に藤色のジャケットを羽織った6人組がいて「青いイナズマ」のSMAPかと思うのだが、6人いるのは森くんも含めて スマップなのか、いやあれはV6だとの意見もあり確かにSMAPがいてV6がいないのはどうかとか、首に羽のショールをつけたタッキー&翼らしき二人組、いかにもジャニーズらしい華やかさだが後から考えると、なぜ諸先輩に混じりデビュー順としては後輩にあたるタキツバだけがあの中にいたのか、そしてKinKi Kidsはいずこ、となかなか興味深いジャニーズ年代記大会であった。
フル?でラップもあった。スクリーンでは西暦のカウントが刻まれ、その時々にデビューしたグループの名が浮かび上がる。

16.君への想い 
ジャニーズ年代記の後は嵐年代記。カウントしていた年号が1999で止まり嵐の名が浮かび上がる。デビューから今までの写真をバックに歌う。DIGITALIANの「君の夢を見ていた」と同じ位置付けの曲。DIGITALIANではファンのスナップショットが集まり巨大な嵐を構成する細胞となる・・・ようだったが今回はジャニーズ50年の歴史が嵐の歴史へと繋がっている・・・ファンを細胞にジャニーズを歴史に抱えている嵐・・・いろんなものを抱えています・・・
 
17.Rolling days
櫻井翔ソロ。挑戦→ファンカッション。Blast!のような、マーチングバンドパフォーマンスのパーカッションだけ抜き出したようなもの。TV番組「ガムシャラ!」においてJr.が挑戦する企画がありJr.ファンにはおなじみのものだったらしい。
確かにスネアの音がかっこいい曲なのだが歌い上げる形のロマンチックな恋愛とひたすら硬い表情(プレイを間違えないようにと思うが太鼓を見るわけにいかず、まん前をカッと見つめながら叩き歌う)のパフォーマンスに、こちらがどういうテンションで対峙すればいいのか戸惑う。曲もパーカッションも櫻井翔もJr.もかっこいい。かっこいいのだがどうすれば!
はじめUnti-Untiのように一人で野生的に歌い踊るのを想像していた。この挑戦だけ本人提案らしく(他のソロは松本提案、松本自身のソロはスタッフによる)やりたかったんだね、と微笑ましい。パフォーマンスを見てからだとパーカッション部分ばかり追って聴いてしまう(笑)
 
18.Mr. FUNK
相葉雅紀ソロ。挑戦→エアリアルティシュー。来たぜミスターファンク。16のビートが暴れまくる。道をあけな!ときんきらゴージャスに着飾ってのし歩くのをイメージしていたが、衣装はMr.FunkというよりMCハマーだった。
Disco Starに負けじと腰を振る場面やミスターファンクコールもあって盛り上がる。様々な格好のストリートキッズ(これがまたジャニーズ風ストリート)を従え踊る場面の後、Jr.がセコンドぽく付くところでジェームス・ブラウンばりにマントプレイが来るかと思ったらエアリアルティシューだった。シルクドゥソレイユのように白い布に巻き取られフライイングをするのだが、2010の国立競技場における君と僕の見ている風景コンサートでMJウォークに相葉氏が登場した時の驚きと歓声を思い出す。
あの経験と信頼があるからこそ松本氏は今回のパフォーマンスを相葉氏に提案したのだろう。
 
櫻井ソロからテーマは闇、夜の様相を帯びる。相葉ソロでは爆発しそうな夜のパーティーの幕開け。
 
19.FUNKY
特に前触れもなく始まる。Love、DIGITALIANコンで参加型企画のレクチャーはたっぷりしてきたので今回は告知すればコンサートの流れを遮ることなく始められると踏んだのだろうか。三年越しの教育の甲斐あってか皆できるできないにかかわらず参加していた様子。私も周りに合わせて思い出しながらライトを振った。
リフターで散り散りになりスタンドに近い場所で目の前の客席を導くようにメンバーが踊るので周囲の観客は大喜び。リフターがお立ち台や盆踊りの櫓のごとく中心となり、上に立つメンバーが皆を踊りの輪に誘う。
曲も夜のビーチパーティーがテーマで朝まで踊ろうよと宴もたけなわ。衣装がジャングル探検みたいな感じになってた?
 
20.Bolero! 
この曲に関しては以前ちょっとTwitterで触れた。
 
この点踏まえてどう踊って見せるかに注目していたが客煽りの盛り上げ曲であった、Popcornで「旅は続くよ」がチャールストンダンスをどう見せてくるか、と期待したところ気球に乗って出てきたときの気持ちとカブる。
「旅は続くよ」は翌年のLoveで同系統の「モノクロ」に曲を変えそこでチャールストンをアレンジしたダンスを披露してくれたので、Bolero!もまた今後何らかの発展形で見ることができるかもしれない。
私にはフォーリーブスが入ったとんちきラテン歌謡の延長線上に見えるが、嵐にはジャパレゲやサッカーアンセムのように聞こえているようだ。観客もさっきまでFUNKYで振っていたペンライトをタオルのごとく振り回し、誰に言われずともホエロ!ホレロ!オオオオオオオオオオオオーーーーと大騒ぎ。
スクリーンにはサングラスをかけた左右に揺れるヒマワリ(フラワーロック)、サンバスタイルの女性、シマウマ、サングラスをかけた猿、恐竜?まで現れ、南米もカリブもアフリカもいっしょくたの勘違い南方イメージが次々飛び出し狂乱の夜は過ぎてゆく。

21.暁
大野智ソロ。挑戦→MASKマジック。狂乱の爆発的騒ぎから兵どもが夢のあと。人々が消え去り夜も明けんとする頃荒野に怪しげな影あり。という風情でメインステージ上は降ろし髪鬘に仮面を被り袴姿の男が一人。
手から傘を出し蜘蛛の糸や絹裂を出し、あちらにいたと思えばこちらに現れる。ここで先ほどまでの熱狂的騒ぎは静まり返り、観客は不思議な光景を見つめることになる。仮面を早替えする姿に無言で見入るドーム。
仮面と和装を脱ぎ捨て黒いスーツ(赤裏地の刺繍が施された明治の軍服風フロックで、和服時の鬘がしゃぐま〜歌舞伎のカツラみたいなので戊辰戦争薩長軍がかぶってるやつ〜のイメージでなんだか薩長軍の将校に見える。後ろのJr.も作務衣風で筒袖ダンブクロ〜着物と袴を改造した簡易軍服〜に見える、戦地を離れ、月の光から隠れるように闇にまぎれ荒野をいく将校と守護する4人…とか空想が膨らむ)で曲が始まる。

以下先入観もたずにダンス見たい人は薄目で飛ばしてください

 

大野のダンスについてPopcorn以来「床との関係、歩く」という動作に注目しているのだが、今回は地を鎮めるように踏みしめながら花道を歩く様が印象的。
異生物的な昆虫のようなDIGITALIANのImaging Crazy、床と戯れ舞っていた宮城でのtwoとも違い、腰を落とし歌舞伎の六方みたいな?うまく形容できないが、ポーズはジャズのように外側に伸び、それを繋ぐ動きは舞や武道というか。ヴオーギングのようでもあるがポーズ間の流れが曲線的で波紋のよう。
スクリーンには墨絵の龍が天を翔ける映像。バックのJr.は扇を持ち(青以外の嵐のメンバーカラー)腕を伸ばし歩く様が神楽の奉納のよう。
「心にもあらで憂き世にながらへば」という三条院の上の句が何度か繰り返されるが、権力闘争に敗れ座を追われた天皇の不本意ながらこんな辛い生を続けているという鬱歌。翻弄され流浪しながらも地を踏みしめ風に吹かれ行く。
最後に「心にもあらで憂き世にながらへば」生きていたくもないけれど生きていれば「恋しかるべき夜半の月かな」この夜の月を懐かしく思い出すこともあるだろうか、と全ての句が詠まれるとき、初めて小刻みな笛の音に乗って踊る。
自身が風になって空に散っていくような終わり方ではっとする。

 

MASKは大野自身がKyo to Kyoでやっていた演目。松本の提案によってJaponismのソロにこれを嵐に蘇らせ、続くダンスと歌で新しい和の解釈を生み出せたと思う。大野智に和が合うことは納得済みだが、本人の東洋的舞踏の解釈をもっと見てみたいと思った。*2

 
22.Japonesque 
暁の後、Jr.による薙刀の舞が軽く行われる。Jr.とはいえ松本幸大26歳、立派な風格。
こちらの気持ちはまだ暁の憂き世感を引きずって何か物悲しい(笑)

メインステージ下手に太鼓と笛、上手に三味線方がずらりと(それぞれ5人ずつはいたと思う、笛はお一人)歌舞伎舞台のように並び和の音を奏でる。この方々はジャニーズ外部の演者なのだが、黒紋付に袴姿(DVD撮りの東京公演では職人風の法被とパッチになってしまっていた。紋付袴が好きだったので残念)とても壮観かつ清々しく男らしく、Japonismという舞台全体の和の軸を作っていたと思う。
正直このコンサートにあたって自分が抱いていた不安

Japonismコンサート、ヒロム美学が多分苦手な自分は怯えつつワクワクしてます。 自分のようなものにも見られるあらし味付けの喜多川歌舞伎だと思えばいいのであろう。(ジャニで和というとブブブブブブブブブブブンオーオーしか出てこない雅じゃない人間)

— けいベ (@keibeee) 2015, 11月 6

 

 これがこの笛太鼓三味線方で一掃されたと言っても過言でないほど。

*なぜ喜多川ヒロム美学に苦手意識があるか、単純に自分が老け専で熟年男性が好きなのとミュージカルが苦手だからである。ジャニー喜多川ヒロム氏は興味深い人物でありその審美眼に敬服するが要するに私にはジャニヲタになる資質と資格がないのである。

竿燈や龍を持ったJr.たちが現れだんだん舞台はお祭りじみて明るい雰囲気に。ローラースケートまで出た。
お囃子の中スクリーンに夜桜が咲き乱れ、花びらが舞う中、メイン上段に5人が華やかな青基調の着物をまとってどーん!と登場で一気に時代絵巻のクライマックス。
すごい都をどり感。
前編でも書いたが私は爺専で、着物保守派なので少年が肌襦袢のようなレーヨンの薄い着物を着て胸をはだけていたりするといたたまれなくなってしまうジャニヲタ失格者なのであるが、この着物は衣装の上にしっかり厚く重ね着込んでいるため詰め物をしたように恰幅が良く、若党がわざと女や童子の着物を着てかぶいている雰囲気が出ていてよかった。嵐もおっさんだし。
また三味線太鼓衆が紋付袴で場を引き締めてくれているため嵐とジュニアが思い切りかぶいても大丈夫な世界観の軸ができていた。
着物の柄は大野→登り鯉、滝を登った鯉は龍となる。暁では龍となって風に駆けたがここでまた前世の鯉に戻る?櫻井→桜、名前の通り。相葉→藤に蝶と束ね熨斗?の吉祥文様。二宮→鞠に鼓?琵琶。松本→松に白波。これも名前からか。
帯の後ろ側に太縄で水引きのようなかわいい飾りが付けられているのだが、前からだとこれが歌舞伎の荒事の仁王襷(暫とかの)のようにも見えて逆に強そう。
また三日月柄の番傘を持って並ぶとやはり白浪五人男を思わせ、そうすると琵琶柄の二宮は弁天小僧か?など面白い。
ここで歌われるのは暁の憂き世を吹き飛ばし、咲き誇る浮世の華。
暁で三条さん落ち延びた先は花鳥風月が歌う誇り高き楽園であった。あの月が見守ってくれる下で再び花開く。よかったよかった。
ついでにオープニングのSakuraもここで再び生まれ変わりを果たす。
咲き誇る花の下、幾重も着込んで豪奢な格好をして、重いんです!衣装が!という感じで微笑みながら不自由そうに肩をゆすり♫ゆらり揺れてーと階段を下りてくるのが大変可愛くめでたく面白い。これぞ太平の世。バックでは桜柄の傘が回る。
この曲とこの演出でJaponismに持っていたイメージ「楽」が決定づけられた感じがした。
 
23.心の空 
回る傘が集まり目隠しになり、後ろで早替え。着物を脱ぎ捨てていつもの嵐ダンスナンバー風赤いスーツに。
着物の時二宮は裾に黄色いフリンジが付いていてそれが関取の化粧回しのようで、女児風の着物の柄との兼ね合いが面白い組み合わせだったのだがこの衣装になってもまたフリンジが生きているのが微笑ましかった。
太鼓と三味線がユニゾンでリズムを刻み、いやもう天晴れな和の舞台、全体の雰囲気が楽しく見つめるだけで、嵐の細かい部分を覚えていない、ラップあり。
TVやMVではいまいちピンとこなかったラップ部分の揃ってないよさこいぽさもこの大舞台ではやれやれどんとやれ!酒持ってこいや踊れ踊れ!というお大尽気分になるのだった。和楽器隊ほんといいな。
総勢何人の男がこの舞台上にいたのか。男ばっかりの華々しさ、これも宝塚を意識したジャニーさんイズムかも。*3
デビュー曲で変な子おもろい子だった嵐に対し、こんなかっちり歌って踊れるんだと思い直した2ndシングル曲。
ダイナーで夜を過ごし21世紀の朝を迎える少年たちのPVが忘れられない。明るく前向きでいながら綺麗なストリングスやスラッピングベースの効いた馬飼野康二のこの曲が本当ーに本当ーに好きなので嬉しくて、抱きしめてやるっ!と手をクロスし、だーんらだっだらー!と叫びまくる。たりらりらー、らっちゃっちゃーらっちゃちゃーの源流はここにあったか。
 
25.Oh Yeah! 
明け方に翔る静寂の 道を負ける戦はしないよ。
よかったね三条(もう暁の三条天皇に入れ込んでいる)

26.Believe
暁からここまで、心の空を除き夜半、薄明から夜明けを歌った曲。日出づる国ニッポンの夜明けセクションである。 
 
挨拶
全体として、ジャニーズでよかった、ジャニーズはいいところ、ジャニーズの良さを繋いでいきたいという「Viva!ジャニーズ」

27.僕らがつないでいく 
僕らがジャニーズのと日本の伝統をつないでいきますみたいな?Overtureアニメが繰り返される。行っては巻き戻し、はじめに戻り、また行こう、この構成嵐大好きだよね。終わりはからくり戸みたいなのに入っていく?
 
【アンコール】 
28.ユメニカケル
詩も曲も美しいが、よくできた合唱曲のような小綺麗さも感じる曲だったのが大音量で宮城Blastで聴いた時は全く別の曲に化けていた。空に抜ける重低音と渾身の声にスタジアム自体が滑走し飛び立つような迫力を感じた。ここでは歓声に紛れてしまってまたおとなしい曲に。まあアンコールだし。

29.Love so sweet
この曲定番ならもっともっと観客がJr.と一緒に踊る曲みたいにしていけたらよくないですか?Popcornの時がそんな感じでJr.くんが花道に散ってアリーナやスタンドに向かって一緒に踊ってくれたのがすごく楽しかった。ジャニーズの後輩をアピールするラブソぅジャニーズイズムな時間にしましょう!
 
30.A・RA・SHI
原点回帰ということでもうこれしか無し。ゆずれないよ誰も邪魔できない。バックバンド、Jr、和楽器隊も勢ぞろいで再度メンバー紹介、俺らの名前はなんだーあらしーで、ありがとうありがとう、とステージ下に下がっていく。
またあのターミネーターみたいなのあり。演奏笛太鼓三味線も続く中幕が閉じ、大団円。太鼓の方、アリーナに目線くれて微笑んだりしてました。
 
 
今回幸いにも天井席ながらほぼ正面から見ることができたため、双眼鏡を握りしめずっと見入っていた、魅せるコンサートであった。
終了後の飲み会で同行者と語ったのは(ちなみにこの方はアイドルは顔命!贔屓の笑顔を見るためにコンサートに行く!と言ってはばからないタイプ)
 
「ずっと見てた、贔屓より全体の世界に浸った」
「お弁当食べて酒飲みながら楽しみたかった」
「三倍払うから三分の一の大きさの会場で見たい」
「見たい!でもこういう劇場サイズのジャニーズ舞台みたいなのを嵐がドームでやる事に意味があるのかもね」
「だから中間とってアリーナサイズですよ」
「次どうなると思う、ここまできたら」
「うーーーーーーんストリートに戻るのはどうでしょうかね…」
 
気が早い私達であった。
だが嵐がここまで一丸となり一貫した世界観で構成されたコンサートが出来るようになるまでに、それこそデビュー前から見守ってきた方々などは長年待ってこられたと思う。
短いスパンで区切ってもPopcornコンサートからの実験〜その前段としてDream"A"LiveからBeautiful worldまでの試行錯誤〜が着実に実を結び、今も常に前進を続けているのが嵐のコンサート。
今年の課題は来年に、と長い目で見守りつつ時にはせっかちに予想や期待を楽しむのもいいだろう。

*1:ジャニーズすなわちとんちき日本趣味という解釈については一考の余地ありと考える。ジャニー喜多川氏にアメリカ生まれゆえの日本憧憬があることは一貫していると思うが、見たところフォーリーブス時代、1970年代にはアナクロ的日本趣味はジャニーズ曲に反映されていない。フォーリーブスはむしろ当時流行の洋楽をそのまま日本語化していた。このコンサートでもジャニーズ50年の歴史が強調されていたが、シブがき隊「スシ食いねェ!」が1986年、忍者が美空ひばりの「お祭りマンボ」でデビューしたのは1990年である。ただし忍者は1980年代からジュニアとして光GENJIと重なる活動をしていた。私はジャニーズに関して無知なので、今の時点では「ジャニーズ=とんちきジャパンというスタイルの源流は(私見ではたのきんから現在の近藤真彦長老体制に繋がる原点である)ジャニーズ中興期、1980年代の文化風俗と関係があるのでは」というTwitterのフォロワー様からの指摘を頭に置くに留めたい。

*2:これは大野に限らずの話、例えばMASKはジャニーズの伝統芸であるが西洋的世界観の中で東洋的エッセンスではなく全体を通じて東洋的枠組みからもう一度捉え直し、憑依の象徴としての神楽における変面、舞踏的な仮面の世界に寄せていっても何か面白い事が起きる感じがした。

*3:私見ではジャニーさんはスターとライバル達、で男の華を競わせるが藤島ジュリーさんは男子校の男わらわらの雰囲気つくりがうまいと思う、乙女ゲーの攻略対象集団な。

Japonismコンサート感想:藤島グループによる喜多川ジャニーズイズムの展開と継承(前編)

(2015年11月7日、名古屋ドーム公演)

まずはじめに一言でいうと、大変面白く見応えのあるコンサートだった。2012年の嵐ツアーPopcorn以来の楽しさと発見があった。

私はジャニーズでは嵐のコンサートにしか行かないので、嵐が今回原点としていると思われるジャニー喜多川さん原作・監修による舞台、Kyo to Kyoからジャニーズワールド、ドリームボーイズなどを劇場で見ている方とはまた感じ方が違うと思う。喜多川舞台を知らぬ身からすれば「私だってここまでおじさまの育ててきたものを生かして、ドームで花開かせられるのよ」という藤島ジュリーさんの声が聞こえてくるようであった。それが正しいかそうでないかはさておき。

パンフレットは未読、MC等なし、コンサート演出を見た上でのJaponism各曲感想という感じです。記憶違いや間違いは順次訂正していきたいと思います

 

会場

入場して目に入るのが4本の大きな赤い柱。ただの円柱ではなく金沢駅の鼓門の柱のように鼓を縦に伸ばしたような、紐を回転させたような形状。

柱の間、メインステージ中央に上方から白い掛け幕が吊ってある。中央にJaponismの文字、メンバーカラー?を縁に施す(ちょっと五節句や四方神のような趣)
中央、上手と下手に赤い花道。会場入りした途端、わー歌舞伎や芝居小屋みたいという印象。

 

Overture

Japonismの幕が振り落とされメインステージのスクリーンが現れる。

青年達がタイムスリップし室町時代ごろ?の先祖に会い今を問うような内容の疾走感溢れるアニメーション(製作はA-1 Picturesだそう)
クールジャパン、アニメ・ジャポニスムという言葉が頭をよぎる。
だがいわゆるジャパニメーションのようにヒーローが戦う題材のアニメではなく、普通の青年である嵐の5人が日常から時間を遡り過去の自分と日本を幻のようにかいま見、「今をどう生きる」と問いかける形になっているのが現代的。

 

1.Sakura 
アルバムオープニングでもあるとはいえ大変ドラマティックな曲ときついダンスのため、しょっぱなからコレやっちゃうの?大丈夫なの?と驚くが後に続く時代絵巻クライマックスを考えれば、日常生活からの夢想というOvertureアニメからこの少々現代的、悲壮的でありながら時を超えた輪廻転生や復活を思わせる曲につなぐのは今思えば良い構成だと思う。とても強い曲なのでこれを後のクライマックスに持ってくると今回のテーマや他の曲がブレて中途半端になってしまう。ちなみに宮城BlastではこのSakuraがクライマックスにあり大変印象的だった。今回は原点回帰の原初における生まれ変わりの姿として花びらが舞い落ちて水に流れ、またどこかで花開くであろう様を踊っているように見えた。コンサート始まりゆえ鬼気迫るような全力投球ではないがひらひらと程よく力の抜けた美しさ。

 

口上
激しいダンスの後暗転して5人がステージに横並びに。一人一人にスポットが当たり年齢順にJaponismの世界へようこそ的な口上を述べていく。

最後は歌舞伎風に「隅から隅までずずずいっと」正座してお辞儀「お楽しみくださりましょう」拍子木で柝頭が打たれてJaponism本編の始まり。

 

2.miyabi-night 
自分的予想でオープニングだった曲。ステージにバックダンサーであるJr.が現れ、太鼓や三味線の音、スクリーンには四季折々の豪華絢爛絵巻で一気に華やかに。

しかしSakuraの疲れか汗びっしょりの姿にはらはらして肝心な曲自体を正直あまり覚えていない。
これからご覧になる方はぜひ気楽に豪華なたりらりらーを楽しんでいただきたい。
なにはなくともジャポニズムで四季は進み四つ打ちのリズムは太鼓の音になり響き、時は進む。

 

3.ワイルド アット ハート
4.Troublemaker
メインステージからセンターステージに移動
和バージョン。始めにちょっとしたアクセントダンスっぽいものが入る。これも和で。
ここまで序盤でいつものコンサートにつきもののシリアスなダンスナンバー、アクセントダンス、を使い切ってしまうところが興味深い。

 

5.青空の下、キミのとなり
バックステージに移動後、高くせり上がったステージで踊る。

Sakuraもこの曲もJaponism収録のシングルナンバーはどちらも大好きで、特にこの曲は私にとってピカンチダブル→kageroを経て到達した30代嵐のエヴァーグリーンであり、宮城Blastで空に溶けていく歌声に涙したものである。作り込まれた舞台装置のドームの中で聴くとまた趣は違うがやはりいい。評判の悪いダンスもひっくるめて全てが愛おしい。この曲の第一印象が実は「遥か遥か昔に聞いたフォーリーブスの新しい冒険に似ている」であったので、私としてはJaponismにおける最古で最強力で懐かしい音響的ジャニーズイズムをまとった曲でもある。
ダンスが疲れてへろってても気にしない!

 

[挨拶]いつもの感じ。シャッフルなし。

 
6.Make a wish 
通常盤を一度しか聞いていなかったので一瞬なんの曲か分からず焦る。
いい曲です。爽やかにお手振り。このときバックステージからムビステでメインに戻るのだが防振双眼鏡に映っていたのは両手にうちわを抱え満面の笑みで叫びながらムビステ下に飲み込まれていくアリーナ席の男性であった…ほんと嬉しそうだった。
 
7.MUSIC
二宮和也ソロ。挑戦→タップダンス。ふわふわの白いシャツを着てタッップする度にステージの床に様々な色と模様が映し出される。多分メンカラーなのかな?二宮自身の黄色になるとキュッキュッという子供のサンダルのような音になり、それに合わせておどけたフリをしたり可愛らしい。曲を聴いたときは80年代の跳ねるような高音を巧みに生かしたガールズポップ(The Go-Go’sとか)ぽく感じ、カラフルな衣装で賑やかにJr.を従えて踊ると思っていたがパントマイムの様相で小芝居が光る。ステッキ代わりにライトセーバー風の棒。上方カメラが真上からステージ床の模様とダンスを映し出してミュージカル映画のよう。曲が進むにつれスクリーンにダンスダンスレボリューション風のコンボ画面が映り、ゲーム文化が伝えるジャポニズムを感じさせる。
 
8.Don't you love me?
松本潤ソロ。挑戦→パルクール。ミュージカルぽさが続き前半はJr.と歌い踊っていたのが後半急にいかつい人が現れて追いつ追われつのアクションへ。この挑戦はスタッフからの提案で、最初できるようになるまで1年半見ておいてくださいと言われたが3ヶ月で仕上げたとか(8日MCより)。曲はゴージャスなフュージョン系のバックにちょっと前のめりにアクセントが入る歌い方のヴォーカルが乗ってアイドル全盛期の豪華で洒落た曲を思わせる。セット仕立ての派手なアクションの世界は全然関係ないが刑事ヨロシクを思い出した。追っ手から逃れ、メインステージの部屋にたどり着きソファーに倒れこんでジ・エンド。 
 
9.イン・ザ・ルーム 
倒れこんでジ・エンドかと思いきや5人の男たちがそれぞれの部屋でソファーに座っていた。松本ソロからの流れで青ズボンに白シャツ。倒れこむ松本、歌い出しの二宮がスポットライトで映し出される。うーんうーんこれはLoveコンサートの「モノクロ」リベンジか?とワクワクするかっこよい仕掛け。それぞれのソファーの横には衣装かけのポールがあってそこから上着を取り着込んだりラップするさまにスポットライト。こっちはPopcornの松本ソロの5人版のようでもある。
私が一人で思っているだけかもしれないが、最近はツアー途中での修正が少なくなり、企画時点で以前の演出や曲を根本からブラッシュアップしたものを次回以降のコンサートで見せてくることが多くなったように感じてなかなか嬉しい。Loveでは椅子に座って歌うアクションや、立ち上がり花道からセンターに集合するまでの動きがとても雰囲気良く見応えもあったのだが、いかんせん現場でもそれぞれが広いドームで遠く散らばっていたため結果的に一人しか見られず、映像化されたものでも一方向からしか映されていない部分が多かった。そのためメンバーそれぞれの動きをもっと見たいとフラストレーションが溜まってしまったのが、今回はメインステージ側に全員の見せ場を集めることでかなり解消された形になっていると思った。欲を言えばひとりずつスポットライトで着替えの前にソロダンスの見せ場が欲しかったー。
後半メインステージに集まり軽くダンス。二宮ソロからここまでは本当に洒落たミュージカルや映画のよう。ジャニーズイズムで言えば源流はプレイゾーンのカテゴリーでしょうか?
 
10.マスカレード
嵐版少年隊仮面舞踏会キターーー。スーツと同じ青に白い模様の入った派手なハットをかぶり、華麗な船山基紀編曲に乗せたこれでもかこれでもかという感じの少年隊及び80年代歌謡曲ワールドが繰り広げられる。プレイゾーンのショータイムですか?イン・ザ・ルームのアーバンで伏し目な感じとはガラッと変わり、派手に派手に。プラスチックのアクセサリーのように無意味でキラキラした歌詞と振り付け。アイウオンチュッベェイビ、アイニーヂュベェイビ、マスカーレェイド!とカタカナ英語を空虚なリズミカルさで畳み掛けるヴォーカルの職人芸、CDで聞いた時から嵐すごいアイドル巧者!青臭さの全くない老練なアイドルイズム!嵐ここまで来たかと感服する思いだったがステージでもそれは生きていた。
衣装の青いスーツはこっちに寄せてゴテゴテ王子様風なので、ちょっとイン・ザ・ルームには合わなかったかなー。振り付けは大野智。スタンドマイクでくるくるまわり膝をつき踊りザ・昔のアイドルワールド全開。途中マイクスタンドを片付ける場面もダンスになっていて、ジュニアがステージでメインになるのだが、Jr.の方がすっきりしたジレ姿でスマートなのが笑えて嬉しくなってしまった。なんかゴテゴテした衣装が羞恥とかでなく貫禄につながるおじさんアイドルに嵐もなったんだなーと、じじ専としては感慨深かった。
最後には懐からスキットルを取り出しぐいと口に含んだ水(ウイスキーのつもり?)をぶーっと吹き出す。これはジャニーさんの憧れの君、沢田研二の「カサブランカ・ダンディ(1979)」のオマージュ?船山基紀が編曲した沢田研二の代表曲には「嵐にしやがれ」とネタを同じくする「勝手にしやがれ(1977)」がありこの曲はそれにも似てるよね。時系列でいうと、ゴダールの映画→勝手にしやがれ→船山編曲・沢田研二(そういえばジュリーはかつてフランスでもデビューしていました)→船山編曲・少年隊ABC→ABCをサンプリングしたa Day in Our Life→嵐にしやがれ→船山編曲・によるマスカレードにおいて酒吹き出し、となる。
これで船山基紀にもジュリーにも少年隊にも(ついでにゴダール、ボギーにも)オマージュを捧げることができました。ってこと? しかし大野氏どんな資料を参考にどういう顔してこの振り付け作ったのか興味深々。(水ブーっは皆が嫌がると思って振り付けた言ってますがジャニーズの憧れジュリー様なら皆真似するよ…ね?)
 
11.Happiness 
12.ハダシの未来
13.GUTS ! 
ハダシは音頭版ではなかった。ここまでフロートで外周お手振り。今回このフロートがとてもシック。全体が赤と黒の漆ぬりの寄木箱のようになっていてJaponismと文字が入っただけ。フロートというと満艦飾の電飾チカチカなファンシーなイメージだったのでこの落ち着いたデザインは好感。全体的に今ツアーはメルヘンちっくなファンタジー要素がなく自分はそこが合っていた。フリフラ制御のペンライトもギラギラしておらず暖かいぼんぼりのような色でよかった。
 
14.愛を叫べ
これもまた懐かしダンスのミクスチュアー。グリースなでつけありサタデーナイトフィーバーあり和製ソウルダンス風ありで、結構客席には中年男性もいらっしゃったので懐かしく楽しんだのでは。
 
MCを挟んで後半へ。
 
(後編へ続く)
11/19 沢田研二が口から水を吹く曲はカサブランカダンディーでした、訂正しました。申し訳ありません。
勝手にしやがれ」ではハットを投げるパフォーマンスがあります。