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Are You Happy? レビュー3:Groove Groove Groove 重ねて Music

10.また今日と同じ明日が来る

二宮和也ソロ。

エモな二宮和也をボカロのキャラクターのように扱いエレクトロで仕上げた曲。従来二宮ソロは「自作のエモーショナルな詞、メロディと声」が主体である。だが一貫してビート、リズムが主体となっているこのアルバムの中ではそのエモさをあえてキャラクターとして処理しているように見える。WONDER-LOVEがメロディ主体で仕上げられればTimeのRock Youのように、この曲もメロディ主体でいけば字余りエモーショナルギターポップになっただろう。だがそうならなかったのが本作がただの寄せ集めアルバムにならなかった凄いところで、個人的に「サンプリング素材としての二宮和也の発見」であるトラック09-10がAre You Happy?のハイライトだと思っている。「エモな二宮」を素材としてサンプリングしてビートに乗せているのだ。エモニノがエロクトロニカ上の声としてキャラクター化されることでいつもの「エモな二宮ソロ」節が苦手な人にも聞きやすく結果的に伝わる楽曲になっている。エモな二宮ソロが好きな人はどうキャラクタライズされようとエモニノ好きなのでこれも問題ないのである。二宮監修の前トラックWONDER-LOVEと音の傾向を合わせたそうだが、メロディや曲調で選んだのかこのビート、エレクトロ的処理を二宮がチョイスしたのかはわからない。ただ自身のラジオで嵐楽曲を連続的にかける「ニノフェス」などを聞く限り彼はソロとはまた違ったグルーヴィーなDJセンスを持っている。それが曲に反映されているのかも。ミニマルに始まり壮大なアンビエントに展開していくトラックが美しい。

11. Daylight

典型的な嵐の良曲ミディアムバラード。これどこに入れるか難しかったと思う。超変化球が続いた後の落ち着きといったところだがトラック10のピアノがこの曲のイントロへの上手い橋渡しになっている。ここで初めてメロディ主体の曲が来るんじゃないのかな、このアルバム。エンディングで鳴り響くトランペットの中野勇介氏はこのアルバムでほぼ半分、8曲に参加している。がっつり演奏陣が関わるウエイトが大きいのもこのアルバムの音に強さと一貫性がある一因だと思う。

12.愛を叫べ

この曲は不思議な曲で、シングルとして聞くとちょっと古臭いどうってことない(ごめんなさい)結婚式ソングなのだが宮城BLASTでは神々しい鎮魂の曲に(花に飾られた白いスーツの嵐たちはまるであの世とこの世を結ぶ冥婚の花婿のようだった)今作では多幸感溢れる懐かしいドゥーワップ部分が生きていて間奏のストリングスが華麗で曲全体を上品に仕上げている。様々な時代の楽曲を行き来するこのアルバムで歌謡曲最古が青春ブギなら洋楽最古がこの曲という感じ。

13. Baby Blue

松本潤ソロ。

ジョージハリスンみたいなのきた!美しい高野寛エレクトリックシタールから始まるメロウチューン。このシタールはイントロだけでなく間奏でもたっぷり聴かせてくれる。二宮と同様松本のソロと監修曲も同傾向で、こちらは時代的な対比を感じさせる(今作ではこうした同傾向の曲を違う時代的解釈で展開していると感じさせる曲の組み合わせが幾つかある)。監修曲のDriveが80年代シティポップスから90年代の渋谷系への流れを感じさせる作りなら、ソロは渋谷系からリバイバル気味な2010年代の星野源言う所のイエローミュージック。そこを錚々たる渋谷系ミュージシャンたちがバックアップする。ただの懐古趣味ではなく洋楽の日本人的解釈という命題は一過性のムーブメントでは終わらない、そしてアイドルもその一端を担っていると思わせてくれる曲。松本自身の今までのソロも洋楽への憧れと自分の資質との距離の取り方を常に測っているようなところがあったのが、この曲にはうまくはまっている。

14. Miles Away

大野智監修曲。

正直最初はまたピアノでメロディアスなの続くのー?と思ってしまったがそこは大野、バックビートを強く効かせてソウルフルに行くのね、と思っていたが聴くうちにああこれは嵐の各自の声を絵の具のようにして大野が描く絵なのだな、と感じるようになった。中盤からのここまでやるか!という嵐の声の重なりがすごい。うーんちょっとこれはすごい。曲調として何か目を引くわけではない(これはBad boyも同じだ)が、とにかく単純な構成の中に複雑に強く入り込んで突き抜けていく嵐の声とそれを形にしていく姿勢がすごい。そういう意味でも大野の絵のテイストと似ている。別に彼が音をいじってるわけじゃないだろうが(歌割は青春ブギ以外全て監修メンバーが行っている)大野智ちょっとスタジオこもってミックスやってみない?と思ってしまう。あとこんなの思うの自分だけかもしれないが大野の絵と同じでほんのり不気味なのがいい。この重なる声の凄みと不気味さをソロでも良いので追求してみてほしい。

15. To My Homies

櫻井翔監修曲。

韻シストの演奏に兄弟的な存在にに呼びかけるラップと、櫻井翔の引き出しから持ってきたねとニヤリとくる曲。最初のサビで愛を信じてる、ってうんそうだね、真っ正面な歌詞だね(ごめんなさい)と思ってたのが大野パートの次から仙人が雲の上から「こちらはゆったりしてるよhomie」と語りかけているような二宮パートに来て、「これは嵐が嵐でなくなった時、つまり未来ののただのおじさん人となった嵐(二宮パート)が今の嵐(大野パート)に語りかけているのでは?」と感じHomie(=Homeboy、故郷の友人)とは過去現在未来の嵐たちなんだわ!なんて泣けるのわーんわーん、と思ってたら、このパートはリオ行きの飛行機の上で書いたそうで、ゆったりしてるのはアイドルという業から解き放たれた仙人じゃなくてJALのファーストクラスかよ!とかなったがでもまあ前段の思い込み通りのまま解釈して聞いてます。そうすると最後の方で何度だって言うよ愛を信じてる、全てを受け入れてずっと信じてる、ずっと信じてる、のリフレインが胸に刺さってくる。わかったよ君らがそう言うなら光も暗闇も全てを受け入れるよ。ずっとずっと行くよ信じるよ。愛を信じるよ。とポエムだだ漏れになるのだった。

16. Don’t You Get It?

この曲とトラック02のUps and Downsのみがアルバムの5人曲として作られた曲でどちらもFunk。製作陣が本アルバムをどうイメージ付けたかったかが伝わってくる。こちらがリードトラックとして看板的な扱いだがMark RonsonプロデュースのBruno Mars「Uptown Funk」みたいじゃねーの?という声は承知の上、でしょうな。アップタウンファンクにしてもDJプロデューサーであるマークロンソンがブルーノというポップシンガーと共に「ファンクってこういう音楽でしょ」という大衆化を行った結果であって。ここでも「同ジャンルで時代的に対になる曲」を感じさせるのは、Ups and Downsが70-80年代のFunkにジャズフュージョンやディスコの要素を加えて大衆化させたEarth,Wind & Fire(宇宙のファンタジーやセプテンバーといったディスコ曲が有名ですがもっとファンク寄りのアース)っぽい音なのに比べてこちらはその後のプリンスやザップ&ロジャーといった80年代Funkスターを経て前述した通り2010年代のPopなFunkになっているところ。まあとにかく嵐にポップなディスコファンクは正義であるよ。そしてジャニーズのブラックミュージック輸入史的にもこれは王道なのか、な? ちょっとわからないな。

17. TWO TO TANGO

通常盤のみのボーナストラック。

うおおおおかっこいい!スパイ大作戦Mission Impossibleのテーマをアレンジして3-2クラーベに展開したようなイントロに妖しく乗っかる大野ソロ、でもこの曲のおっしゃれーなとこはそこからふわっと広がる「待ってるFantasy 宙に舞う スタッカートなBeat」以降の部分。無国籍的な美しいメロディ展開、こういうのは昨今のダンスミュージックにはないシティポップやエキゾチカミュージックを経由したそれこそはっぴいえんど由来のJ-pop的良さだと思うんですがどうでしょう?

で、これはタンゴなのか? リズムは3-2のソン・クラーベで4ビートスタッカートのタンゴとはちょっと違う。Bolero!がボレロを謳っていながら実情は同じラテンでもカリブのソカやメキシコノルテーニョぽかったように、外国人がソーラン節と言いながら安里屋ユンタ歌ってるようなラテンっぽいエキゾチカと捉えてよさそう。It takes two to tangoは英語のことわざでタンゴは二人じゃないと踊れない、責任は互いにあり、喧嘩両成敗といった意味で、全編に流れるスパイ映画テイストが二人のタンゴをどっちもどっちの共犯者、おあいこといった一蓮托生の駆け引きに感じさせる。

モチーフになってると思われるスパイ大作戦のテーマの作曲者はアルゼンチン生まれのピアニスト、ラロ・シフリン。「ファンタスティックなギターはDjango」でフラメンコちっくなギターが流れるがこれはベルギー生まれのロマ(ジプシー)ジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを指しているのだろう。と、なんとなくタンゴなギミックがちりばめてある。あとこの曲サクラップもかっこいいんですよね。ボートラなのがもったいないけどこのアルバムだと隠し球になるしかない曲でもある。この手の嵐のエレクトロスイング曲の中で一番完成度が高いと思う。ということで次のテーマはジャジー?と振ってみる。

 

(おわりです)